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『ブッシュクラフト入門』Part.1

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時に“生活の知恵”と訳されるブッシュクラフトは、先人が残した大自然を生きるためのスキルを踏襲する野営スタイルだ。食料だけでなく生活の場から現地調達で作り上げるため、当然それ相応の“自力”も求められる。とはいえ、少なくとも自身で拵えた居住空間に生きる間は、何者にも縛られない自由が手に入るのだ。極限まで無駄を廃した生き方にしがらみはなく、現代においても相変わらず、人が生きるのに必要な道具が見えてくる。

刃物。通貨システムにより分業が進み、都市生活を営む我々にとって縁遠くなってしまったもの。でも結局は我々から離れていった分だけ、誰かがそれを一手に担っているだけのことだったのだ。ブッシュクラフトという野営スタイルを通して、刃物をもう一度自分の手に取り戻したい。

撮影協力/佐川急便・高尾100年の森
http://www.sagawa-exp.co.jp/takao100pj/

PROCESS 01
風防効果と熱効率を高める
ファイアーリフレクター

外気温の影響を受けやすい差し掛け式シェルターを補完するのがファイアーリフレクター(熱反射壁)である。シェルターとこの壁の間に焚き火スペースを取ることで、効率よく焚き火の熱をシェルター内に取り込むことができ、風の吹き込みを防止できる。今回はこの壁を利用して調理時に便利なポットクレーンも仕込んだ。

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①適当な高さに丸太が積み上がったら、対となる杭を細引きで縛ると安定感が増す。今回は積み上げた丸太の隙間を活用してポットクレーンも仕込んでいるため、丸太同士をより密着させる必要もあった。

②ファイアーリフレクターの全体像。ところどころ隙間が空いているが、これは後々小枝などを使って埋めた。

③まずは壁の支柱となる杭を4本用意する。素材には真っすぐに伸びた小ぶりの丸太を選び、片方の先端は地面に深く突き刺しやすいよう斧を使って鋭利に整えておく。

④4本の杭の間に適当な長さの丸太や枝を並べていく。より熱反射効果を高めるなら、丸太は2列としてその間に土などを詰めると良い。

PROCESS 02
焚き火での調理をより簡単にする
高さ調節式ポットハンガー

強火~弱火の制御が難しい焚き火には、高さ調節が可能なポットハンガーを用意すると調理がスムーズに進む。高さ調節は、ブッシュクラフトにおいて不可欠なスキルとなるノッチ(刻み目)作りの中でも、最も簡単なベイルノッチを複数作ることで対応している。この道具があれば、炎が不安定なコンパクトな火床でも十分調理可能だ。

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①ベイルノッチの作り方は、適当な太さの枝にナイフで充分な深さの十字を付け(ナイフの峰を棒で叩くと簡単)、不要な3面を削るだけで良い。シャープなフック形状が出来上がる。今回はポットクレーンの高さに合わせて3段階調整とした。ポットや飯盒が掛かるノッチは、高さ調節用のベイルノッチと逆方向の3面を削ることで作ることができる。

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②燃焼時間は短いが高い炎が上がる杉っ葉を使う場合、薪を写真のように持ち上げて空気を送り込み、炎で炙るようにすれば効率良く火床を作ることができるのでお勧めだ。

③火おこしにはマグネシウムファイアーライターとファットウッドを用い、焚き付けには日本ならどこでも手に入る枯れた杉っ葉を使った。ファットウッドはロウで煮た木片でも良い。

④ファイアーリフレクター、ポットクレーン、ポットハンガーを用いた今回のキッチンスペースはなかなかシステマチックな仕上がりだ。

PROCESS 03
軍放出品を活用した格安簡易シェルター
差し掛けポンチョ

本誌でも度々登場している東独軍のポンチョ兼ソロテントを利用した簡易型シェルター。タープやシートを用いた差し掛け型は通常ロープ1本で設営できるが、今回はより強度を出すために枝で枠組みを作った。ファイアーリフレクターとセットで組み上げれば、肌寒い季節でも意外に快適に過ごすことができる。

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①Y時の枝2本と長い枝1本があれば、比較的丈夫なシェルターを設営できる。ポイントとなるのは如何にY時の枝を地面深くに突き刺せるかであり、枝の末端は武器を作るように鋭利に整える。

②ルーフ部を固定するポールやペグも、当然周辺に落ちている枝を使い。ポンチョの張り具合は細引きで調整する。ペグダウンの際も枝先を鋭利に整える一手間で、後々の強度が変わってくる。

③ルーフ部とウォール部をうまく配分することで、それなりの就寝スペースを取ることができた。コットは前号で製作した丸太製だが、それぞれの丸太が転がり落ちないよう凹みをアックスで作っている

PROCESS 04
チェーンソーがあればあっという間に完成する
ヤトゥカンキュンティラ

スウェディッシュトーチとも言われ、日本では“木のロウソク”として親しまれている丸太を使った焚き火具。チェーンソーで入れる切れ込みの数により火力と燃焼時間は変わるが、放置しておいても数時間は燃えているので暖房としても使える。火を付けて丸太の上にヤカンやフライパンをおけば調理もできるスグレモノである。

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①基本的なことだが、ヤトゥカンキュンティラにする丸太はしっかりと固定しておく。切れ込みの数は4、6、8分割くらいが定番で、少ないほど小さな火力で長時間燃える。

②点火方法は切れ込みの間に枯葉などを詰め込んで着火する。一度丸太に火がついてしまえば、煙突効果で側面の切れ込みから空気が取り込まれ、なかなかの火力を維持してくれるから調理にも向く。

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